コラム

『007は二度死ぬ』の舞台・新燃岳|世界が見た霧島連山と、静かな大人の湯宿時間

いまから半世紀以上前、世界でもっとも有名なスパイが、鹿児島・霧島の火山に降り立ちました。1967年に公開された映画『007は二度死ぬ』。ショーン・コネリー演じるジェームズ・ボンドが対峙した悪の秘密基地の舞台に選ばれたのが、霧島連山の主峰のひとつ、新燃岳(しんもえだけ)です。世界的な名作と、この地の深いつながり。今回は映画の記憶をたどりながら、いまの霧島をゆっくりと味わう旅をご提案します。

悪の秘密基地は、霧島の火口にあった

『007は二度死ぬ』は、人気スパイ・シリーズの第5作にあたり、物語の大半が日本を舞台に描かれた作品です。作中では、世界を混乱に陥れようとたくらむ組織スペクターの秘密基地が、火口湖の底に隠されているという設定で登場します。その着想のもととなったのが、霧島連山の新燃岳でした。
本作は、物語の全編を日本に置いた点でも異色の一作でした。ボンドに協力する日本の諜報機関トップ・タイガー田中を丹波哲郎が演じ、若林映子さん、浜美枝さんの二人がボンドガールとして華を添えています。高度経済成長期の日本の風景が世界のスクリーンに映し出され、海外に日本への憧れを広げるきっかけにもなりました。その日本ロケの、象徴的な舞台のひとつに選ばれたのが霧島だったのです。
撮影では、霧島の山々の上空を舞台に、ボンドが操る小型オートジャイロ「リトル・ネリー」と、敵のヘリコプター部隊との空中戦が、空から撮影されました。雄大な火山の稜線を背に繰り広げられる空中アクションは、本作を象徴する名場面のひとつとして、いまも語り継がれています。(※1)

なぜ、霧島だったのか

霧島連山は、20を超える火山が連なる、日本でも有数の火山地帯です。ときに噴煙を上げる新燃岳の荒々しさ、天孫降臨の神話の舞台として知られる高千穂峰(たかちほのみね)の端正な姿。その原
始的で雄大な景観が、世界の映画人の目に、ほかにはない「秘密基地のある火山」として映ったのでしょう。
霧島は、太古からの火山活動が今も息づく土地です。荒々しい山肌とやわらかな温泉、そして神話の記憶が重なり合うこの一帯は、いまでは国立公園やジオパークにも指定され、四季折々に表情を変えます。半世紀を経てなお、その雄大さは少しも色あせていません。
映画の縁は、霧島だけにとどまりません。ボンドが身を寄せる漁村の場面は、同じ鹿児島県の南さつま市・坊津町秋目(ぼうのつちょうあきめ)で撮影され、現在も撮影を記念する碑が建てられています。鹿児島の海と山が、一本の映画の中でひそかに結ばれていたのです。(※2)

映画の高揚のあとに。霧島で、もう一度深呼吸する

スクリーンの中の霧島は、手に汗握る冒険の舞台でした。けれど、実際にこの地を訪れる旅には、まったく違う時間が流れています。喧騒から離れ、自分のためだけに過ごす——霧島は、そんな静かな旅がよく似合う場所です。


静流荘は、霧島温泉郷のなかでも栗川(くりかわ)温泉に湧く一軒宿。1951年の創業から、天降川(あもりがわ)水系の渓流沿いで、訪れる方を静かにもてなしてきました。露天の大浴場に身をゆだねれば、季節ごとに表情を変える霧島の山々と木々の気配、そして耳に届くのは川のせせらぎだけ。肌にやさしい美肌の湯が、旅の高ぶりをゆっくりとほどいていきます。


夜は、鹿児島の四季を映した会席料理を。霧島山系の水で炊き上げる朝食とともに、土地の恵みを静かに味わうひとときは、慌ただしい日々をリセットする、何よりの養生になるはずです。
湯あがりには、築100年を超える古民家を生かした家族風呂や、夜空の下でせせらぎに耳をすます湯も。灯りを落とした静けさのなかで、ただ川の音だけを聴いていると、張りつめていた心がほどけていくのを感じます。ひとり旅の方にも、気兼ねなく過ごしていただける宿です。

霧島をめぐる、大人の一日

映画の舞台に思いを馳せたあとは、霧島の名所をゆっくりとめぐってみましょう。天孫降臨の神話が息づく霧島神宮は、荘厳な社殿とパワースポットとして、いまも多くの人を惹きつけています。


音楽がお好きな方には、山あいのコンサートホール・みやまコンセールもおすすめです。静流荘からは車でおよそ15分。霧島の自然に包まれながら上質な音色に浸る時間は、この地ならではの贅沢です。
なお、新燃岳そのものは火山活動の状況により入山が規制される場合があるため、訪れる際は必ず最新の情報をご確認ください。えびの高原や周辺の展望スポットからは、霧島連山の雄大な姿を安全に望むことができます。(※3)
静流荘は鹿児島空港から車でおよそ30分、霧島神宮駅からは車でおよそ20分と、霧島観光の拠点としても便利な立地です。移動の負担を抑えて、心身を休めることに集中できます。詳しくはアクセスのご案内をご覧ください。
世界が見た火山の記憶を胸に、いまは静かに自分と向き合う——。そんな二つの霧島を、一度の旅で味わってみてはいかがでしょうか。静流荘で、あなただけの霧島時間をお待ちしております。

※1 作中で火口内部に描かれる秘密基地は、実際の火口ではなく、英国パインウッド撮影所に美術監督ケン・アダムが製作した大規模なセットで撮影されました。「日本で城の撮影が難しい」という事情が、火口の秘密基地という着想につながったと伝えられています。
※2 資料によっては、秘密基地の撮影地として韓国岳(からくにだけ)を挙げるものもあります。本稿では、空撮の舞台を含めて「新燃岳および霧島連山一帯」として記載しています。
※3 新燃岳など霧島の火山情報や登山の可否については、高千穂河原ビジターセンター(takachiho-visitorcenter.org)の最新情報をあわせてご確認ください。

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